敗れた棋士は引退――。そんな厳しい対局が22日、大阪府高槻市の関西将棋会館であった。関西のベテラン同士、福崎文吾九段(65)と有森浩三八段(62)の対局で、福崎九段が敗れ、同日付での引退が決まった。タイトルを2期獲得した現役最年長棋士が、46年余りのプロ棋士生活に幕を下ろした。
2人は名人戦へとつながる順位戦に参加しないフリークラスにいる棋士で、規定により、共に残された対局を指し終えた時点で引退という状況だった。だが、そんな立場の棋士同士が対戦するのは極めて珍しい。
この日の対局は、第38期竜王戦(読売新聞社主催)6組の昇級者決定戦。持ち時間は各5時間。
関西のベテラン同士とあって、対局室に入った後も互いに笑顔だった。対局開始前に、福崎九段が「今日は自動記録? この間の対局がそうだったんだけど、(自分が指した後に持ち時間を計測する時計の)ボタンを押すのを何回か忘れて……。互いに秒読みだったんだけど、(対戦)相手が教えてくれて……」と笑いながら話し、有森八段もニッコリする一幕もあった。ちなみに本局は記録係がついていたため、対局者は時計のボタンを自分で押す必要がなかった。
振り駒で福崎九段が先手番に…